交通事故 離婚 不貞 不倫 慰謝料 財産分与のことを種々記載しております。

2025.11.24更新

過失相殺と損益相殺の順序

過失相殺と損益相殺がともに必要なときは、どちらを先に行うかで支払額が変わります。細かい点に思えますが、意外と重要なポイントです。

今回は、過失相殺と損益相殺の順序についてご説明します。

参考記事:過失割合とは?交通事故において持つ意味

 

 

◆ 過失相殺と損益相殺の順番によって支払額が変わる

過失相殺とは、事故について被害者にも落ち度があるときに、受け取れる賠償金を減額することです。対して損益相殺とは、交通事故を理由として金銭的利益を得たときに、相手方に請求できる損害賠償金から差し引くことです。

過失相殺と損益相殺の両方が発生するケースはよくあります。

たとえば、被害者の過失が認められる事故において、被害者の治療費が保険会社から病院に直接支払われている(一括対応)ケースです。

両方が発生するときは、どちらを先にするかで最終的な支払い金額が変わります。

たとえば、以下のケースで考えましょう。

・損害総額:1000万円

・過失割合:9:1

・損益相殺額:200万円

このとき、過失相殺を先に行えば、被害者が相手方に請求できる金額は、

1000万円×0.9-200万円=700万円

です。

同じケースで、損益相殺を先に行うと、

(1000万円-200万円)×0.9=720万円

となります。

順序が異なるだけで、支払額に大きな差が生じます。一般的に、損益相殺を先に行った方が被害者に有利です。

 

◆ 過失相殺を先に行うもの

一般的に、損害の補てんとしてなされる給付・支払いの場合には、過失相殺が先に行われます。具体例は以下の通りです。

・加害者からの弁済

・自賠責保険や加害者側任意保険からの支払い

・労災保険からの給付(最高裁平成元年4月11日判決)

 

◆ 損益相殺を先に行うもの

損益相殺が先に行われるとされるのは、社会保障としてなされる給付です。健康保険からの給付が該当します。

したがって、被害者に過失があるケースでは、被害者は健康保険を利用した方が金銭面で有利になります。

参考記事:交通事故で使える保険

 

◆ 判断がわかれているもの

裁判例によって判断がわかれているものもあります。すなわち、国民年金や厚生年金からの給付では、過失相殺を先に行う裁判例と、損益相殺を先に行う裁判例が存在します。

被害者の立場であれば、損益相殺を先に行うよう主張すべきです。

 

 

以上が、過失相殺と損益相殺の順序になります。細かい話ですので、ご存じない方が多いかと思いますが、実際の支払額を左右するポイントです。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。過失相殺や損益相殺について疑問やお悩みがある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2025.11.11更新

婚姻費用調停の流れ・聞かれること

婚姻費用について話し合いがまとまらないときは、調停による解決が考えられます。今回は、婚姻費用調停について、流れや聞かれることなどをご説明します。

婚姻費用に関する基礎知識は、以下の記事をご覧ください。

参考記事:婚姻費用とは?含まれるものや養育費との違い

 

◆ 婚姻費用調停とは?

婚姻費用の金額は、まずは夫婦間の話し合いにより決めます。話し合いができない・まとまらないときに考えられる方法が、婚姻費用調停(婚姻費用の分担請求調停)です。

調停とは、裁判所における話し合いです。中立の立場にある調停委員を介して行われるため、夫婦間で直接やり取りする必要はありません。当事者だけの交渉よりも冷静に話し合いができるメリットがあります。

婚姻費用調停は、単独で申立てることも、離婚調停と同時に申立てることもできます。離婚調停と合わせて行うときは、先に婚姻費用について話し合われるのが一般的です。

参考記事:離婚調停の流れ~申立てから離婚成立まで

 

◆ 婚姻費用調停の流れ

申立書等の必要書類を提出して婚姻費用調停が申立てられると、第1回期日の日程が決められます。

期日では、当事者が交互に部屋に呼ばれ、それぞれ調停委員と話し合います。夫婦は直接対面せず、互いの主張は調停委員を介して相手に伝えられます。法廷ではなく会議室のような部屋で行われるため、過度に身構える必要はありません。要する時間は合計2時間程度です。

話し合いの中で双方が合意できる金額が決まれば、調停成立です。内容は調停調書にまとめられ、訴訟における判決と同様の効力を有します。

双方が合意できない限り、調停は成立しません。結論が出なければ、次回に持ち越しです。調停は、通常は1ヶ月~1ヶ月半に1回開催されます。

 

◆ 成立しなかったら審判に移行

調停を繰り返しても合意できないときは、調停は不成立です。自動的に審判手続きに移行します。

審判では、当事者の主張や根拠となる資料をもとに、裁判所が結論を言い渡します。訴訟における判決のようなイメージです。同意していない当事者にも強制力を有します。

実際には、裁判所が示す算定表に沿った結論になるケースが多いです。

参考記事:婚姻費用の相場

 

◆ 婚姻費用調停で聞かれること

婚姻費用調停で必ず聞かれるのは収入です。収入は婚姻費用を決める際に重要な要素になります。源泉徴収票や確定申告書といった、収入を証明する書類を用意しておきましょう。

子どもに関する事情も、婚姻費用の算定にあたり重要です。有無、人数、年齢、塾・私立学校の学費などが確認されます。

他には、生活状況、調停に至る経緯、婚姻費用の希望額などを聞かれます。事前に準備しておくとよいでしょう。

 

以上が婚姻費用調停に関する基礎知識です。調停は一応自力でも進められるものの、質問への回答や提出書類など、慣れていないと難しい面があります。弁護士への相談・依頼がオススメです。

 

当事務所では、離婚の初回相談を無料としております。婚姻費用調停について不安や疑問がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2025.10.30更新

損益相殺されるケース・されないケース

交通事故を理由としてお金を受け取っていると、相手方に請求できる賠償金が減額される場合があり、「損益相殺」と呼ばれます。

何が差し引かれるかわかりづらい部分もありますので、今回は損益相殺についてご説明します。

 

◆ 損益相殺とは?

損益相殺とは、交通事故を理由として金銭的利益を得たときに、相手方に請求できる損害賠償金から差し引くことです。法律に明確な定めはありませんが、判例で示されており、実務上は当然に行われています。

損益相殺がなされるのは、賠償金の二重取りを防ぐためです。

交通事故に遭うと、治療費や休業損害のといった損害が発生しますが、相手方からの支払いとは別に、給付金などを受け取れる場合があります。事故を原因として金銭を既に受け取っているのに、それと関係なく損害賠償を相手方に請求できるとなると、利益を受け過ぎていることになります。不公平が生じないように調整としてなされるのが、損益相殺です。

損益相殺がなされるかどうかは、受け取った給付等の種類によって変わります。

 

◆ 損益相殺されるケース

損益相殺がなされ、相手方に請求できる賠償金から差し引かれるものとしては、以下が挙げられます。

・自賠責保険金(政府補償事業によるてん補金も含む)

・公的制度(健康保険・年金・労災など)による給付金(例外あり)

・所得補償保険金

・人身傷害保険金

・加害者から支払われた弁済金

上記のお金については、相手方に請求する際には賠償額から除かなければなりません。

 

◆ 損益相殺されないケース

損益相殺がなされない給付等もあります。損害の補てんを目的としていないものや、定額で支払われるものなどです。

・見舞金、香典

・労災保険の特別支給金

・搭乗者傷害保険金

・生命保険金

これらについては、相手方に請求する金額から差し引く必要がありません。

 

以上が損益相殺に関する基礎知識になります。差し引かれるもの・差し引かれないものは細かく分かれており、一般の方にとっては区別が難しいでしょう。差し引く対象となる費目が決まっているなど、実際のルールはさらに複雑です。相手方に請求する際には、弁護士への相談をオススメします

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。損益相殺で何が差し引かれるのかわからない方は、お気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2025.10.07更新

婚姻費用はいつからいつまで発生する?

「婚姻費用はいつから(いつまで)発生するの?」と聞かれることがあります。婚姻費用は金額が大きくなりやすいため、支払われる時期は重要です。

今回は、婚姻費用の始まりと終わりについてご紹介します。婚姻費用の基礎知識は以下をご覧ください。

参考記事:婚姻費用とは?含まれるものや養育費との違い

 

◆ 婚姻費用はいつから?

夫婦が同居しているときは、通常であれば婚姻費用をめぐる争いは生じません。別居すると生活費が別々に発生するため、婚姻費用が問題になります。

婚姻費用は生活のために必要な費用である以上、素直に考えれば別居した時点から支払い義務が生じるはずです。もっとも実務上は、原則として請求時から支払われるものとされています。別居後に支払われていない期間があったとしても、過去にさかのぼっての請求はできません。

過去にさかのぼれないとされる理由は、請求されるまで扶養が必要だとわからない場合があり、後からまとめて多額の支払いを強いられるのは酷であるためです。請求する側は、別居したらすぐに請求するようにしましょう。

「請求時」とは、具体的には調停を申立てた時を指す場合が多いです。調停の申立てがあれば、請求の意思は明確といえます。調停申立て前に内容証明郵便やメール等で請求したと証明できるときには、その時点から発生します。

 

◆ 婚姻費用はいつまで?

婚姻費用は夫婦であるがゆえに発生する費用です。したがって、離婚が成立し夫婦でなくなった時点で発生しなくなります。

子どもがいて引き取った場合には、婚姻費用に代わって養育費の請求が可能です。ただし、配偶者自身の生活費が除かれる分、婚姻費用と比べて金額は少なくなります。

離婚が成立した場合のほか、別居を解消し同居を再開した場合にも、婚姻費用の支払いは終了します。

 

以上が婚姻費用の始期と終期になります。別居後に請求した時点(主に調停申立時)から発生し、離婚成立時(または別居解消時)に義務がなくなるのが通常です。

当事務所では、離婚の初回相談を無料としております。婚姻費用についてお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2025.09.27更新

交通事故の過失割合に納得がいかないときはどうする?

「交通事故の過失割合に納得がいかない」という方は非常に多いです。過失割合は5%の違いであっても最終的に受け取れる賠償金額に大きな影響を与えます。納得がいかないのであれば、すぐに示談する必要はありません。

今回は、過失割合に納得がいかないときの対処法をご紹介します。過失割合の基礎知識は以下をご覧ください。

参考記事;過失割合とは?交通事故において持つ意味

 

◆ 保険会社と交渉する

まずは、相手方の任意保険会社と交渉するのが通常です。

保険会社は、契約者の言い分をもとに、最大限有利な割合を主張します。一方的な言い分であり、事実と異なることも少なくありません。主張の根拠を聞き、おかしい部分は適切に反論する必要があります。

事故態様に食い違いがあるときは、単にご自身の言い分を伝えるだけでなく、ドライブレコーダーの映像や実況見分調書などの客観的な証拠をもとに反論するのが理想です。

参考記事:交通事故において実況見分調書が持つ意味と入手方法

具体的な過失割合を主張する際には、「別冊判例タイムズ38号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版)」という書籍を参照するのがよいでしょう。この本は、過去の裁判例をもとに、事故態様ごとの基本的な過失割合や修正要素をまとめたものです。保険会社の担当者も参照しているはずですので、知っておいて損はありません。

保険会社は、相手の足元をみて不合理な過失割合を主張する場合があります。もっとも、過失割合を一方的に決める権利は保険会社にありません。言われるがまま受け入れないようにしてください。

参考記事:交通事故の過失割合は誰が決める?どう決める?

 

◆ ADRを利用する

保険会社との交渉で合意できないときにとりうる方法として、ADRの利用が挙げられます。

ADRとは裁判外の紛争解決手続きです。交通事故に関するADRとしては、交通事故紛争処理センターが挙げられます。法律相談や和解あっせんができ、中立の立場で話し合いを仲介してくれます。

裁判よりはハードルが低い手続きであり、費用は無料です。とはいえ、書類の準備が必要になるなど手間はかかってしまい、一般の方にとって手軽な手続きとはいえないでしょう。

 

◆ 訴訟を提起する

最終的には裁判所に訴訟を提起します。最も強力な手段ですが、イメージされる通り、手続きが面倒であり慣れていない方にはハードルが高いです。

 

以上が、過失割合に納得がいかないときにとれる方法になります。ADRや訴訟は手続き面のハードルが高いです。とはいえ、交渉で保険会社に主張を認めさせるのは難しいでしょう。過失割合が争いになった際には、弁護士への依頼がオススメです。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。過失割合に納得がいかない方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2025.09.11更新

婚姻費用をもらえないケース・払わなくていい場合

離婚トラブルにおいて、婚姻費用は必ず発生するわけではありません。今回は婚姻費用をもらえない(支払わなくていい)ケースをご紹介します。

「そもそも婚姻費用ってなに?」という方は以下をご覧ください。

参考記事:婚姻費用とは?含まれるものや養育費との違い

 

◆ 同居している・別居を解消した

夫婦が同居しているときは、基本的に婚姻費用を請求できません。いったん別居したものの、別居をやめて同居を再開したケースも同様です。

婚姻費用は夫婦の生活に必要な費用である以上、同居して生活費を分担しているのであれば別途請求できないのは当然といえます。ただし、同じ家に住んでいても家庭内別居の状態となっており、生活費を分担していないケースでは話は別です。

 

◆ 離婚が成立した

離婚が成立した後も婚姻費用は発生しません。婚姻費用は夫婦であるからこそ負担する義務が生じるためです。

離婚後は、子どもを引き取った側から養育費を請求できます。

 

◆ 請求する側に夫婦関係破綻の原因がある

本来であれば婚姻費用を受け取れる立場にあっても、夫婦関係を破綻させる原因を作ったのであれば、権利濫用だとして請求できない、あるいは減額される可能性があります。

たとえば、収入が少ない側の妻が不倫し、家を出ていったようなケースです。ただし、妻の生活費分を請求できないだけで、何の罪もない子どもの養育費分は請求できます。

 

◆ 収入の多い側が子どもと暮らしている

収入の少ない側が多い側に婚姻費用を請求できるのが通常です。もっとも、収入の多い側が子どもと生活していて養育費を負担しているときは、減額される、あるいは請求できない可能性があります。受け取れないどころか、収入の少ない側に支払い義務が生じるケースも考えられます。

裁判所が示している算定表は、養育費を受け取る側が子どもと暮らしているケースを想定したものです。その他の場合には、別途計算が必要になります。負担者や金額はケースバイケースですので、弁護士にご相談ください。

 

 

以上が、婚姻費用をもらえない・払わなくていいケースになります。個々の事情に応じて見通しは変わってきますので、ご自身の場合にどうなるかを知りたい方は、弁護士にご相談ください。

 

当事務所では、離婚の初回相談を無料としております。婚姻費用についてお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2025.08.27更新

婚姻費用の相場

「婚姻費用の相場はいくらぐらいですか」と相談されることがあります。婚姻費用は離婚まで毎月発生し金額が大きいだけに、離婚紛争においては重要なポイントのひとつです。

今回は、婚姻費用の相場を解説します。

 

◆ 婚姻費用の相場は算定表でわかる

婚姻費用の金額は、夫婦で合意できればいくらとしても構いません。もっとも、現実にはなかなか難しいでしょう。

婚姻費用の相場は、夫婦の年収や子どもの人数・年齢に応じて決まります。細かい計算式もあるのですが、慣れていない方にとって計算は簡単ではありません。実際には、裁判所が公表している算定表をもとにするケースが多いです。

算定表は子の人数や年齢に応じて分かれているため、まずはご自身に合った表を探してください。

たとえば、以下のケースで見ていきましょう。

・夫の年収:500万円(給与所得)

・妻の年収:100万円(給与所得)

・子:2人(10歳と5歳)

・妻が子2人を連れて別居した

 

このケースでは、子2人でともに0~14歳であるため、表13を使用します。婚姻費用を支払う夫が「義務者」、受け取る妻が「権利者」となります。

義務者の給与500万円と権利者の給与100万円が交わる部分を見ると「10~12万円」です。これが婚姻費用(月額)の目安になります。

年収は、給与所得者(会社員・アルバイト・パートなど)については源泉徴収票や課税証明書、自営業者については確定申告書で確認しましょう。

 

◆ 婚姻費用の相場から調整が必要になるケース

算定表の金額はあくまで目安であるとはいえ、基本的には算定表にしたがって婚姻費用を決めるケースが多いです。たしかに家庭ごとに生活に必要な費用は多少異なりますが、通常は細かな事情は考慮されません。

ただし、子が私立学校や学習塾に通い教育費が高い、子の病気で高額の医療費がかかるといった事情があれば、調整が必要です。また、権利者(受け取る側)が無職であるものの、働こうと思えば働けるはずであるときは、潜在的稼働能力が考慮されるケースもあります。

 

以上が婚姻費用の相場に関する基礎知識です。子が4人以上の場合など、算定表が用意されていないケースもあります。弁護士であれば正確な金額を計算できるので、ご相談ください。

 

当事務所では、離婚の初回相談を無料としております。婚姻費用についてお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

投稿者: 松村法律事務所

2025.08.11更新

過失割合に応じた賠償金の計算方法

交通事故では、過失割合によって相手に請求できる賠償金が大きく変わります。今回は、過失割合がどう賠償金の計算に影響してくるかについて、いくつかの例をもとに解説します。

 

◆ 「10対0」のとき

加害者に100%の過失があるときは話が単純です。被害者は、自身に生じた損害額をすべて加害者に請求できます。

ただし、過失がないケースでは、被害者が任意保険に加入していても保険会社の示談代行サービスを使えません。適正な賠償を受けるために、弁護士に依頼する必要性が高いです。

 

◆ 「9対1」のとき

加害者に9割、被害者に1割の過失があるときは、被害者が請求できる賠償金が減額されてしまいます。たとえば100万円の損害があっても、過失の1割が差し引かれるため、請求できるのは「100万円×0.9=90万円」です。

同じ事故で加害者にも50万円の損害が生じていれば、加害者から被害者にも過失分の1割を請求できます。すなわち、「50万円×0.1=5万円」の請求が可能です。(被害者が任意保険に加入していれば実際に負担するのは保険会社です。)

このとき、双方がそれぞれ90万円、5万円を相手方に支払う場合もあれば、差し引き85万円を加害者が被害者に支払う場合もあります。

 

◆ 「9対0」のとき

通常、過失割合は足して10になりますが、「9対0」のように足して10にならない場合もあります。「片側賠償(片賠)」と呼ばれる、加害者が請求権を放棄したケースです。

被害者の損害額が100万円であれば、加害者に請求できるのは90万円となり、この点は「9対1」のケースと同じです。ただし、片側賠償では加害者から被害者への請求は行われません。

片側賠償とすれば、被害者が賠償金を支払う必要はなくなります。加入している任意保険を使わずにすみ、保険等級が下がらず保険料が上がらない点がメリットです。また、高級車に乗っていたなど加害者側の損害が大きいと、被害者であるのに支払額が高額になってしまいますが、片側賠償ではそうした事態を回避できます。

ただし、片側賠償は双方の合意がなければできません。相手が応じることが前提になるので注意してください。

 

以上が過失割合に応じた賠償額の計算方法になります。ご自身の事故における過失割合や計算について詳しく知りたい方は、弁護士にご相談ください。

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。過失割合についてお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2025.07.24更新

婚姻費用とは?含まれるものや養育費との違い

離婚に向けた協議で問題になるポイントのひとつが婚姻費用です。「聞いたことはあるけど養育費との違いがわからない」という方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、婚姻費用の意味や含まれるもの、養育費との違いをご説明します。

 

◆ 婚姻費用とは?

婚姻費用とは、夫婦が生活するために必要な費用です。略して「婚費(コンピ)」とも呼ばれます。

夫婦には互いに協力して生活を支える義務があります。生活費すなわち婚姻費用は、夫婦で分担しなければなりません(民法760条)。

同居して夫婦円満であれば特に問題は生じませんが、別居すると婚姻費用の問題が表面化します。たとえば、収入の少ないあるいは無収入の妻が家を出て別居しても、十分な生活を送れません。夫婦である以上、別居していても婚姻費用を分担する義務があるため、妻は収入の多い夫に対して婚姻費用を請求できます。

 

◆ 婚姻費用に含まれるもの

婚姻費用には、生活に必要な様々な費用が含まれます。夫婦だけでなく子の生活費も含みます。

婚姻費用に含まれる主なものは以下の通りです。

・住居費(家賃など)

・食費

・被服費(衣類にかかるお金)

・医療費

・子の養育費、教育費

・常識的に必要な交際費、娯楽費

もちろん生活に必要な金額は家庭によって千差万別です。収入・資産や社会的地位、子の有無や年齢などによって婚姻費用は変わってきます。

 

◆ 婚姻費用と養育費の違い

婚姻費用と同様に離婚に際して問題になるのが養育費です。両者は似ていますが、対象となる範囲や支払い時期が異なります。

婚姻費用は、別居している配偶者と子の生活費を合わせたものです。対して養育費は、子の養育にかかる費用です。婚姻費用には配偶者分が含まれるのに対して、養育費には含まれません。したがって、金額としては婚姻費用の方が高額です。

時期については、婚姻費用は婚姻中(離婚前)に発生するのに対して、養育費は離婚後に生じるという違いがあります。

まとめると、離婚前(別居中)は「配偶者+子」について婚姻費用が発生し、離婚後は子についてのみ養育費が発生します。

 

以上が婚姻費用に関する基礎知識です。婚姻費用については説明したい内容が他にもありますので、何回かに分けてご紹介します。

当事務所では、離婚の初回相談を無料としております。婚姻費用についてお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2025.07.11更新

交通事故の過失割合は誰が決める?どう決める?

交通事故の過失割合は、受け取れる賠償金額に大きな影響を与えます。今回は、過失割合は誰がどのように決めるかを解説します。

 

◆ 当事者同士で話し合う

ほとんどの事故において、過失割合は当事者同士の話し合いで決まります。実際には被害者・加害者本人ではなく、加入している任意保険会社や当事者が依頼した弁護士が代わりに交渉を行う場合もよくあります。双方が任意保険に加入している場合には、保険会社同士の話し合いで決まるケースも多いでしょう。

具体的な割合は、「別冊判例タイムズ38号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版)」という書籍にしたがって話し合われるのが一般的です。この本には、過去の裁判例をもとにした、事故類型ごとの基本的な過失割合や修正要素などが記載されています。交渉の際には、事故状況の認識をすり合わせてどの類型にあたるかを判断し、個々の事情に応じて修正がなされます。

 

◆ 相手方保険会社に言われた通りに応じる必要はない

ご自身で交渉していると、相手方保険会社から一方的に過失割合を通告される場合があります。もっとも、応じる義務はありません。

保険会社は、契約者から聞いた話をもとに、支払額を抑えるためにできる限り有利な割合を主張します。したがって、言われた通りにすると本来よりも不利な割合になる可能性が高いです。上で紹介した書籍を参照する、証拠を示す、専門家に相談するなどして、納得のいく限りご自身の主張をした方がよいでしょう。

保険会社に一方的に過失割合を決める権限はありません。言われるがまま応じる必要はない点を頭に入れておいてください。

 

◆ 最終的には裁判官が決める

話し合いがまとまらないときは訴訟になり、最終的には裁判官が判決により過失割合を決めます。確定した判決には従わなければなりません。

裁判では、当事者の主張だけでなく、実況見分調書、ドライブレコーダーなどの証拠が重視されます。

 

◆ 警察が決めるわけではない

勘違いされている方も多いのですが、警察が過失割合を決めるわけではありません。「民事不介入」の原則があり、警察は私的な紛争には口を出せないことになっています。

たしかに事故の際に警察が作成する実況見分調書は重要な証拠になりますが、警察には過失割合を決める権限はありません。たとえ口頭で「あなたは悪くない」などと言われたとしても、法的に意味はないので気をつけてください。

 

以上が過失割合を決める人や決め方に関する基礎知識です。基本的には当事者同士の話し合いで決まります。ご自身での交渉に不安をお持ちの方は、弁護士にご相談ください。

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。過失割合についてお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所