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2026.09.08更新

むち打ちによる後遺障害について

交通事故でむち打ちのケガを負うと、後遺障害等級が認定される可能性があります。等級が認定されるかどうかは、最終的に受け取れる賠償金を大きく左右する重要なポイントです。

今回は、むち打ちで後遺障害が認定されるケースについて解説します。

参考記事:後遺障害の認定を受けるメリット

 

 

むち打ちで後遺障害認定を受けるのは難しい?

むち打ちで治療を続けても、痛みやしびれなどの症状が残ってしまう場合はあります。もっとも、何らかの症状を感じているからといって、後遺障害等級が認定されるとは限りません。以下の記事で解説している通り、「後遺症」の一部しか「後遺障害」とは認定されないためです。

参考記事:後遺障害とは?後遺症との違いは?

とりわけ、むち打ちでは、本人が感じている症状を客観的に証明するのが難しいです。後遺障害の等級が認定されるハードルは高いといえます。

参考記事:後遺障害の認定確率

 

むち打ちで後遺障害の認定可能性があるのは12級・14級

むち打ちで認定可能性があるのは、12級あるいは14級です。

12級については「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)に該当する場合があります。認定されるのは、MRIなどの画像所見から明確に症状を証明できるケースです。

14級については「局部に神経症状を残すもの」として14級9号に認定される可能性があります。明確な画像所見がなくとも、その他の神経学的検査の結果、事故の大きさ、治療の経過などから、症状を医学的に説明できるケースです。

むち打ちで12級が認定されるケースは少なく、ほとんどが14級になります。

 

むち打ちで後遺障害が認定されやすいケース

むち打ちで後遺障害認定を受けるハードルは高いものの、以下の条件が揃うと等級認定がおりやすくなります(主に14級)。

・十分な頻度で長期間通院している(目安:週2日以上・6ヶ月以上)

・整骨院ではなく整形外科に通院している(参考記事:交通事故で整骨院に行くときの注意点

・症状が一貫している

・症状を説明するための検査結果が存在する

・後遺障害診断書を適切に作成している(参考記事:後遺障害診断書とは?

反対に、これらの条件を満たしていない場合には、認定は難しくなります。一度結果が出た後でも、異議申し立てにより覆るケースがありますので、交通事故に詳しい弁護士に相談してみるとよいでしょう。

参考記事:後遺障害の異議申し立て

 

以上が、むち打ちによる後遺障害についての基礎知識です。ご自身の場合にどうなるか気になる方は、弁護士への相談をオススメします。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。交通事故でむち打ちのケガを負われた方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2026.08.07更新

入通院慰謝料はどれくらい?

交通事故によるケガで入通院をしたときに受け取れるのが「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」です。金額は「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」のいずれで算定するかにより大きく異なります。

今回は、入通院慰謝料の金額について解説します。交通事故で受け取れる慰謝料の種類については、以下の記事をご覧ください。

参考記事:交通事故の慰謝料にも種類があります

 

自賠責保険基準

自賠責保険の支払い基準では、入通院慰謝料の金額は「4,300円×対象日数」です。

ここでいう「対象日数」は「治療期間」と「実入通院日数×2」のうち小さい方になります。

たとえば、通院期間が3ヶ月(90日)で実際に通院した日数が30日の場合、「実入通院日数×2(=60日)」の方が小さいです。したがって、自賠責保険基準による入通院慰謝料は、4,300円×60日=258,000円と計算されます。

自賠責保険は最低限の補償を行う保険であるため、以下で説明する「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」と比べて低額です。

 

任意保険基準

自賠責保険に上乗せとして加入するのが任意保険です。任意保険における支払い基準は、保険会社によって異なり、公開されていません。

一般的には、自賠責保険基準に多少上乗せをした金額になっている場合が多いです。次に説明する弁護士基準よりは低額になります。

 

弁護士基準(裁判基準)

弁護士に依頼した場合、裁判をすれば獲得できるであろう金額を、相手方に請求します。それが「弁護士基準(裁判基準)」と呼ばれるものです。

交通事故で参照されることが多い『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(通称:赤い本)という書籍によると、入通院慰謝料は以下になります(一部抜粋)。

 

入院期間

0月

1月

2月

3月

4月

5月

6月

通院期間

0月

 

53

101

145

184

217

244

1月

28

77

122

162

199

228

252

2月

52

98

139

177

210

236

260

3月

73

115

154

188

218

244

267

4月

90

130

165

196

226

251

273

5月

105

141

173

204

233

257

278

6月

116

149

181

211

239

262

282

7月

124

157

188

217

244

266

286

8月

132

164

194

222

248

270

290

9月

139

170

199

226

252

274

292

10月

145

175

203

230

256

276

294

11月

150

179

207

234

258

278

296

12月

154

183

211

236

260

280

298

 

たとえば、入院1ヶ月・通院5ヶ月のときは141万円、入院なし・通院6ヶ月のときは116万円となります。

弁護士基準は、自賠責保険基準や任意保険基準と比べて高額です。十分な補償を受けるには、弁護士に依頼して弁護士基準で請求するのが重要になります。

なお、上記は重傷のケースに用いられる表です。むち打ちなど軽傷のケースでは、金額が低くなります。むち打ちの場合の慰謝料額については、今後改めて解説します。

 

以上が、入通院慰謝料についての基礎知識です。相手方から提示される金額は、弁護士基準よりも低額なケースがほとんどです。言われるがまま示談せず、弁護士に相談するようにしましょう。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。慰謝料について疑問がある方は、お気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2026.07.07更新

交通事故の慰謝料にも種類があります。

 

 

交通事故では、様々な場面で「慰謝料」という言葉が出てきます。

一般的に慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償金のことです。ただし、慰謝料と一口に言っても、交通事故の場合にはいくつかの種類があります。

交通事故に遭った際に受け取れる慰謝料は、大きく分けて3種類です。すべてが発生するわけではなく、状況によって受け取れるものが異なります。

今回は、交通事故における慰謝料の種類を整理して解説します。

 

入通院慰謝料(傷害慰謝料)

1つ目が「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」です。

入通院慰謝料は、交通事故によるケガで入院・通院を強いられたことに伴う精神的苦痛を、賠償するための慰謝料です。

入通院慰謝料の金額は、大まかに言うと、入通院期間・日数により決まります。軽傷であっても、ケガを負い治療をしていれば発生します。重いケガで長期の治療を強いられたケースの方が金額は大きいです。

自賠責基準と弁護士基準とで金額は大きく異なりますが、おおむね数十万円から数百万円になります。

 

後遺障害慰謝料

2つ目は「後遺障害慰謝料」です。

後遺障害慰謝料は、治療しても後遺障害が残ってしまった場合に支払われる慰謝料です。入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料が発生するのは、後遺障害の等級認定がおりた場合に限られます。

後遺障害が残り、元の身体に戻らなくなっている以上、後遺障害慰謝料の金額は入通院慰謝料と比べて高額です。金額は等級によって変わりますが、弁護士基準では、一番低い14級でも110万円、上位の等級になると1000万円、2000万円といった額になります。

等級ごとの後遺障害慰謝料の相場は、以下の記事をご覧ください。

参考記事:後遺障害の認定を受けるメリット

 

死亡慰謝料

3つ目は死亡慰謝料です。

死亡慰謝料は、交通事故により亡くなった場合に発生する慰謝料です。亡くなった本人だけでなく、遺族(近親者)にも固有の慰謝料が発生します。

命を奪われることによる精神的ショックは計り知れないため、金額は後遺障害慰謝料と比べても高額になります。被害者の家庭における立場にもよりますが、おおむね2000万円~3000万円程度です。

具体的な相場は、以下の記事でご確認ください。

参考記事:交通事故の死亡慰謝料の相場

 

以上が、交通事故における慰謝料の種類についての基礎知識です。

人身事故では、いずれか(複数の場合もあり)の慰謝料が発生します。自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準のうち、どの基準により算定するかで金額が大きく異なります。争いになりやすいポイントですので、ぜひ弁護士にご相談ください。

これまであまり触れていなかった入通院慰謝料については、改めて詳しく解説する予定です。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。慰謝料について有無や相場を知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2026.06.18更新

物損事故時の請求について

これまで、物損事故で相手方に請求できる項目として、修理費、評価損、代車費用などについて扱ってきました。これら以外にも請求できるものがあります。

今回は、物損事故で請求できるもののうち、これまであまり触れてこなかった費目について解説します。

参考記事:物損事故とは?人身事故との違い

 

引き揚げ費・レッカー代・保管料

走行不能になり引き揚げ費・レッカー代が発生した場合には、必要かつ相当な範囲であれば、損害として相手方に請求できます。車両が物理的に走行できても、ケガにより運転できない状態であった場合は同様です。

保管料については、経済的全損の場合に、修理するか買い替えをするかを判断するために必要な期間の分は、請求が認められます。

 

時価査定料・見積費用

時価査定に要した費用や、修理費の見積もり費用も、損害として相手方に請求が可能です。

 

廃車料・車両処分費

全損の場合に、廃車・車両処分に要した費用を請求できます。

 

積荷・着衣・携行品

事故により車両に積んでいた荷物や着衣などに損害が生じた場合、相手方への賠償請求が可能です。

たとえば、車に乗せていたノートパソコン、持っていたスマートフォンなどが破損した場合には、賠償を求められます。ただし、購入額や買い替えに必要な金額を全額補償してもらえるわけではありません。中古価格や減価償却を考慮した価値が上限となります。

なお、メガネ・義手・義足などの損害も補償されますが、身体と一体で日常生活に不可欠なものであるため、人損として扱われます。

 

ペット

ペットは、法律上は「物」扱いです。したがって、ペットが死亡したりケガをしたりした場合には、物損として賠償請求を行います。

ただし、飼い主にとってペットは家族同然である以上、単なる物とは別に扱われる場合があります。

たとえば、物損では、慰謝料は原則として認められていません。しかし、ペットが亡くなった・重いケガを負ったケースでは、一般的に慰謝料が認められています。また、高額の治療費や葬儀費用も請求が可能です。

 

以上が物損で請求できるものについての基礎知識になります。様々な費用を請求できる可能性がありますが、個々の状況によって判断が変わるケースも多いです。気になる点は弁護士にご相談ください。

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。お気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2026.05.07更新

代車費用が賠償されるケース

代車費用が賠償されるケース

 

交通事故後に車両の修理・買い替えが必要になるとき、それまでの期間は代車(レンタカー)を使用する場合があるでしょう。代車使用に要した費用は、損害として相手方に請求できる可能性があります。

今回は、交通事故における代車費用について解説します。

 

代車を使う必要性がある

代車費用を請求するには、代車を使用する必要性が認められなければなりません。

必要性が認められやすいのは、以下のケースです。

・営業用車両である

・自家用車を通勤・通学に利用している、送迎や買い物など生活に不可欠

次の場合には、必要性がないと判断されやすいです。

・レジャー・趣味で利用しているだけ

・事故車以外に使える車がある

・公共交通機関の利用でこと足りる

なお、代車費用を損害と認めてもらうには、基本的に実際に代車を利用することが不可欠です。例外的なケースを除き、利用していない場合には、代車使用料は請求できません。

 

代車費用が認められる期間

代車費用が認められる期間は、修理や買い替えに通常要する期間となります。一般的には、修理の場合は1~2週間程度、買い替えの場合には1ヶ月程度です。

もっとも、交渉に時間を要したなど、個々の事情により変動するケースも少なくありません。相手方の都合により修理が遅れたような場合には、期間を延長できる可能性があります。

 

代車の車種

基本的には、同グレードの車種を利用した場合にかかる費用が、損害として認められます。上位グレードの車種を借りたとしても、同グレードの車種を借りたときの費用が限度になります。

なお、高級外車の場合には、使用目的に照らして、国産高級車相当の代車費用に限られるケースが多いです。

 

以上が、交通事故の代車費用に関する基礎知識です。あくまで一般論であり、個々の事情によって、請求できるか否か、どの範囲で認められるかが変わります。気になる点がある方は、弁護士への相談をオススメします。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。疑問や悩みがある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2026.04.09更新

事故車の評価損(格落ち)

事故車の評価損(格落ち)

 

交通事故で車を修理すると、「評価損(格落ち)」が損害として認められる場合があります。

今回は評価損について解説します。

 

評価損(格落ち)とは?

評価損(格落ち)とは、修理によって車両の価値が下落する損害です。交通事故により壊れた部分を修理した際に、車両の価値が下がったことを理由に損害賠償が認められるケースがあります。

評価損には、以下の2種類があります。

・技術上の評価損:修理しても外観や機能に何らかの欠陥が生じること

・取引上の評価損:事故歴によりマイナスイメージを持たれ市場価値が下がること

実際に事故車両を売却していなくとも、車両の価値が低下した場合には評価損を請求できる可能性があります。

 

評価損が認定されるケース

現実には、評価損が認定されるケースは限られています。認定されやすくなる事情としては、以下が挙げられます。

 

判断要素

認定されやすくなる事情

車種

外国車、国産高級車、人気車種

登録年数

初度登録からの期間が短い(3~5年程度以内)

走行距離

少ない(4~6万km程度以内)

損傷箇所

骨格部分の損傷(フレーム・バンパーなど)

修理内容

大規模・広範囲

 

これらの事情を総合的に考慮して判断されるため、評価損が認められるかはケースバイケースです。

判例に基づくひとつの目安として、次の基準が挙げられます。

・外国車や国産人気車種:初度登録から5年程度以内・走行距離6万km程度まで

・国産車:初度登録から3年程度以内・走行距離4万km程度まで

 

ただし、実際に評価損を受け取るハードルは高いといえます。特に交渉段階では、保険会社が認めてくれないケースが多いです。訴訟をしても、裁判所が認めてくれるとは限りません。

なお、評価損が発生するのは、修理して使える状態であることが前提です。全損で買い替えが必要になる場合には、評価損は請求できません。

 

 

評価損の金額

評価損の金額の算定方法は、様々あります。

実務上多く用いられるのが、修理費の一定割合を評価損とする方法です。修理費の何パーセントとするかはケースバイケースです。おおむね10%~50%までと幅は大きいですが、30%程度になる場合が多いといえます。

ただし、明確な基準はありません。金額の見通しをつけるのは難しいといえます。

 

以上が評価損についての基礎知識です。保険会社が認めない場合が多く、明確な基準もないため、自力で請求するのは困難です。弁護士への相談をオススメします。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。事故に遭われた方は、お気軽にご相談ください。

 

 

 

投稿者: 松村法律事務所

2026.03.11更新

交通事故での車の修理代

交通事故での車の修理代

 

交通事故ではケガ・死亡による損害(人損)が大きいものの、物損も争いになる場合があります。特に車の修理費用は多くのケースで発生するため、問題になりやすいです。

今回は、交通事故での車の修理代について解説します。

 

修理代は賠償の対象

交通事故により車の修理が必要になった場合、多くのケースで相手方に修理代を請求できます。

修理費の金額は、修理工場で見積もりを出し、アジャスターが調査・確認し、それをもとに決定されるのが通常です。

なお、事故以前から存在したキズの修理や、必要のない部品交換などは、交通事故による損害とはいえず、相手方に請求できません。

 

修理代全額を受け取れるとは限らない

修理代は全額受け取れるとは限りません。

全額受け取れない場合として挙げられるのは、自身に過失があるケースです。自身の過失分については、相手方に請求できません。たとえば、修理代が50万円で過失割合が「8:2(相手8割、自身2割)」の場合には、50×0.8=40万円しか請求できません。

参考記事:過失割合とは?交通事故において持つ意味

また、相手方が任意保険に加入していない場合には、支払いを受けられない恐れがあります。法律上は請求権があるものの、相手がお金を持っておらず支払い能力がなければ、事実上踏み倒されてしまいかねません。なお、自賠責保険では物損は対象外です。

相手方から受け取れない場合でも、自身が車両保険に加入していれば補償を受けられます。ただし、車両保険を利用すると保険料が上がってしまいますので、損にならないかを確認しておくようにしましょう。

 

全損の場合には買替差額が補償される

全損の場合には、修理費ではなく買替差額が補償されます。

全損には「物理的全損」と「経済的全損」があります。

物理的全損とは、物理的に修理が不可能な場合です。経済的全損とは、修理は可能であるものの、修理費が車両時価と買替えに要する諸費用との合計を上回っていて、経済的に考えて修理するのが不相当な場合です。

物理的全損あるいは経済的全損の場合には、事故時の車両の時価相当額と売却代金との差額が、損害として認められます。時価は、レッドブックなどをもとに算定されます。購入時の価格ではなく、時間の経過に応じて価値が下落している点には注意してください。

加えて、実際の買替えに要した費用のうち、自動車税環境性能割、登録・車庫証明・廃車・納車等にかかる手数料、手続き代行手数料、リサイクル料金などが損害として認められます。

 

以上が交通事故の修理費に関する基礎知識です。細かい部分が争いになる場合もありますので、わからないことは弁護士にご相談ください。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。事故に遭われた方は、お気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2026.02.09更新

物損事故から人身事故に切り替える方法

交通事故に遭った方から、「物損事故(物件事故)から人身事故に切り替えた方がよいか」と聞かれることがあります。

早い段階であれば、物損から人身への変更は可能です。場合によっては切り替えを検討するとよいでしょう。

今回は、物損事故から人身事故への切り替えについてご説明します。

 

 

◆ 物損事故から人身事故への切り替えが問題になる場面

物損事故(交通事故証明書の記載では「物件事故」)とは、人が死傷せずに、車両等の物だけに損害が生じている事故です。人が死傷している「人身事故」とは別に扱われます。

交通事故では、事故直後には症状を感じておらず物損扱いにしていても、次第に症状が現れてくるケースが少なくありません。症状が出てから、人身事故扱いとすべきか悩む方がいます。

また、本来は人身事故であるのに、違反点数の加算や刑事責任の追及を避けたい相手方から「物損扱いにして欲しい」とお願いされ、応じる方もいるでしょう。

このように物損事故となっている場合に、人身事故に切り替えるべきなのでしょうか?

 

 

◆ 物損事故から人身事故に切り替えるべきケース

物損事故(物件事故)か人身事故かは、あくまで警察における分類です。実際にケガが生じているのであれば、損害賠償を求めることはできます。

既に相手方保険会社から治療費が支払われているときは、物損事故扱いのままでも、問題なく賠償を受けられる場合が多いです。もっとも、以下のケースでは、人身事故への切り替えを積極的に検討しましょう。

 

・過失割合が争いになっている・なりそう

過失割合が争いになっているときは、警察が作成する「実況見分調書」が有力な証拠になります。物損扱いだと、実況見分調書が作成されません。客観的な証拠を得るには、人身事故に切り替えて実況見分を行い、調書を作成してもらうのがよいでしょう。

参考記事:過失割合とは?交通事故において持つ意味

 

・後遺障害認定の可能性がある

物損扱いのままだと、軽い事故だと判断されてしまい、場合によっては後遺障害認定に不利に働くおそれがあります。

参考記事:後遺障害とは?後遺症との違いは?

 

 

◆ 物損事故から人身事故に切り替える方法

物損事故から人身事故に切り替えたいときは、まずは病院で診断書を取得してください。事故によるケガであると証明するためです。

診断書を取得したら、警察に出向いて切り替え手続きをします。他にも、運転免許証、車検証などの必要書類があるため、事前に管轄の警察署に確認し、訪問日時も決めておくとスムーズです。

切り替えの期限は明確には決まっていませんが、事故から1週間~10日程度までに行うのが望ましいです。遅れると事故とケガとの因果関係を疑われ、受け付けてもらえない可能性があります。早めの行動を心がけてください。

切り替えが完了したら、相手方の保険会社に連絡をしておきましょう。

 

 

以上が物損事故から人身事故への切り替えの概要です。切り替えるべきか迷っている方や、手続きに不安がある方は、お早めに弁護士にご相談ください。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。物損事故から人身事故への切り替えについてお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2026.01.10更新

物損事故とは?人身事故との違い

物損事故とは、人がケガをせず、物だけに損害が生じる交通事故です。人身事故とは法的な扱いが異なります。

今回は物損事故の意味や人身事故との違いを解説します。

 

◆ 物損事故とは?

物損事故とは、死傷者がいない交通事故です。物だけに損害が生じている事故になります。

たとえば、自動車、建物、ガードレールなどが破損したものの、人的被害はなかったケースです。たとえ家族同然であったとしても、ペットは法的には物として扱われます。

人が死傷した事故は、人身事故と呼ばれます。人と物の両方に損害があった場合には、物損事故ではなく人身事故です。

物損事故は比較的軽微な場合もありますが、警察には必ず報告しなければなりません。警察においては、物損事故は「物件事故」という名称になります。当事者がケガをしていても、警察では物件事故として処理されるケースもあります。

 

◆ 物損事故で認められる損害

物損事故で生じ得る代表的な損害は以下の通りです。

  • 修理費(相当額)
  • 買い替え費用(登録に要する費用など)
  • 評価損(修理しても欠陥が残る、市場価値下落が見込まれる場合)
  • 代車使用料(修理・買い替えまでに代車を利用した場合)
  • 休車損(営業用車両の場合)
  • レッカー代、保管料

物損では、基本的に慰謝料(精神的な苦痛に対する賠償金)は支払われません。

 

◆ 物損事故と人身事故の違い

物損事故と人身事故の違いはいくつかあります。ここでは、刑事責任、行政処分(違反点数加算)、自賠責適用の有無について説明します。

まず、物損事故では、基本的に刑事罰には問われません。人身事故では「過失運転致死傷罪」などの犯罪に該当するとして、刑事裁判を通じて刑罰が科されるケースがあります。

次に、物損事故では通常は違反点数が加算されません。当て逃げなどの例外的な場合を除き、免許への影響はないということです。

損害賠償に関しては、物損事故では自賠責保険が適用されません。自賠責保険は人的損害のみを対象としています。相手方が任意保険に加入していない場合には、相手方本人への請求、あるいは自身の車両保険等を利用して補償を受ける必要があります。

 

以上が物損事故の意味や、人身事故との違いに関する基礎知識です。

物損事故では、人身事故と比べて補償が手薄になりやすいといえます。気になる点がある方は、弁護士にご相談ください。

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。お気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2025.11.24更新

過失相殺と損益相殺の順序

過失相殺と損益相殺がともに必要なときは、どちらを先に行うかで支払額が変わります。細かい点に思えますが、意外と重要なポイントです。

今回は、過失相殺と損益相殺の順序についてご説明します。

参考記事:過失割合とは?交通事故において持つ意味

 

 

◆ 過失相殺と損益相殺の順番によって支払額が変わる

過失相殺とは、事故について被害者にも落ち度があるときに、受け取れる賠償金を減額することです。対して損益相殺とは、交通事故を理由として金銭的利益を得たときに、相手方に請求できる損害賠償金から差し引くことです。

過失相殺と損益相殺の両方が発生するケースはよくあります。

たとえば、被害者の過失が認められる事故において、被害者の治療費が保険会社から病院に直接支払われている(一括対応)ケースです。

両方が発生するときは、どちらを先にするかで最終的な支払い金額が変わります。

たとえば、以下のケースで考えましょう。

・損害総額:1000万円

・過失割合:9:1

・損益相殺額:200万円

このとき、過失相殺を先に行えば、被害者が相手方に請求できる金額は、

1000万円×0.9-200万円=700万円

です。

同じケースで、損益相殺を先に行うと、

(1000万円-200万円)×0.9=720万円

となります。

順序が異なるだけで、支払額に大きな差が生じます。一般的に、損益相殺を先に行った方が被害者に有利です。

 

◆ 過失相殺を先に行うもの

一般的に、損害の補てんとしてなされる給付・支払いの場合には、過失相殺が先に行われます。具体例は以下の通りです。

・加害者からの弁済

・自賠責保険や加害者側任意保険からの支払い

・労災保険からの給付(最高裁平成元年4月11日判決)

 

◆ 損益相殺を先に行うもの

損益相殺が先に行われるとされるのは、社会保障としてなされる給付です。健康保険からの給付が該当します。

したがって、被害者に過失があるケースでは、被害者は健康保険を利用した方が金銭面で有利になります。

参考記事:交通事故で使える保険

 

◆ 判断がわかれているもの

裁判例によって判断がわかれているものもあります。すなわち、国民年金や厚生年金からの給付では、過失相殺を先に行う裁判例と、損益相殺を先に行う裁判例が存在します。

被害者の立場であれば、損益相殺を先に行うよう主張すべきです。

 

 

以上が、過失相殺と損益相殺の順序になります。細かい話ですので、ご存じない方が多いかと思いますが、実際の支払額を左右するポイントです。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。過失相殺や損益相殺について疑問やお悩みがある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所