過失相殺と損益相殺の順序

過失相殺と損益相殺がともに必要なときは、どちらを先に行うかで支払額が変わります。細かい点に思えますが、意外と重要なポイントです。

今回は、過失相殺と損益相殺の順序についてご説明します。

参考記事:過失割合とは?交通事故において持つ意味

 

 

◆ 過失相殺と損益相殺の順番によって支払額が変わる

過失相殺とは、事故について被害者にも落ち度があるときに、受け取れる賠償金を減額することです。対して損益相殺とは、交通事故を理由として金銭的利益を得たときに、相手方に請求できる損害賠償金から差し引くことです。

過失相殺と損益相殺の両方が発生するケースはよくあります。

たとえば、被害者の過失が認められる事故において、被害者の治療費が保険会社から病院に直接支払われている(一括対応)ケースです。

両方が発生するときは、どちらを先にするかで最終的な支払い金額が変わります。

たとえば、以下のケースで考えましょう。

・損害総額:1000万円

・過失割合:9:1

・損益相殺額:200万円

このとき、過失相殺を先に行えば、被害者が相手方に請求できる金額は、

1000万円×0.9-200万円=700万円

です。

同じケースで、損益相殺を先に行うと、

(1000万円-200万円)×0.9=720万円

となります。

順序が異なるだけで、支払額に大きな差が生じます。一般的に、損益相殺を先に行った方が被害者に有利です。

 

◆ 過失相殺を先に行うもの

一般的に、損害の補てんとしてなされる給付・支払いの場合には、過失相殺が先に行われます。具体例は以下の通りです。

・加害者からの弁済

・自賠責保険や加害者側任意保険からの支払い

・労災保険からの給付(最高裁平成元年4月11日判決)

 

◆ 損益相殺を先に行うもの

損益相殺が先に行われるとされるのは、社会保障としてなされる給付です。健康保険からの給付が該当します。

したがって、被害者に過失があるケースでは、被害者は健康保険を利用した方が金銭面で有利になります。

参考記事:交通事故で使える保険

 

◆ 判断がわかれているもの

裁判例によって判断がわかれているものもあります。すなわち、国民年金や厚生年金からの給付では、過失相殺を先に行う裁判例と、損益相殺を先に行う裁判例が存在します。

被害者の立場であれば、損益相殺を先に行うよう主張すべきです。

 

 

以上が、過失相殺と損益相殺の順序になります。細かい話ですので、ご存じない方が多いかと思いますが、実際の支払額を左右するポイントです。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。過失相殺や損益相殺について疑問やお悩みがある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。