交通事故の時効期間と起算点・延長方法
交通事故による損害賠償請求権には、時効があります。物損については3年、人損については5年を経過すると、時効にかかって権利が消滅し、支払いを受けられなくなるおそれがあります。
今回は、交通事故の時効期間や起算点・延長方法について解説します。
◆ 交通事故の時効期間
交通事故により人的・物的損害が生じた場合には、法律上「不法行為に基づく損害賠償請求権」が発生します。しかし、請求権には消滅時効期間の定めがあり、経過すると賠償を受け取れなくなるおそれがあります。
時効期間は請求内容によって異なります。
車の修理代などの物損については、時効期間は3年です(民法724条1号)。
事故によるケガや死亡についての時効期間は5年です(民法724条の2)。かつては物損と同じく3年でしたが、民法改正に伴い2020年4月より5年に延長されました。
通常であれば、交通事故の時効期間は3年か5年です。ただし、物損・人損いずれについても、当て逃げ・ひき逃げで加害者がわからないときは20年となります(民法724条2号)。途中で加害者が判明したときは、そこから3年または5年で時効にかかります。
なお、上記は加害者に対する損害賠償請求権の時効期間です。自賠責保険に対する被害者請求権は3年で時効にかかるので注意してください。
◆ 交通事故の時効の起算点
時効を考える際には起算点、すなわち、いつからカウントをスタートするかが重要になります。起算点は請求内容により異なり、一般的には以下の通りです。
・物損 :事故時(期間は3年)
・傷害分 :事故時(期間は5年)
・後遺傷害分 :症状固定時(期間は5年)
・死亡分 :死亡時(期間は5年)
後遺傷害に関する時効は症状固定時から進行すると考えられていますが、後遺障害の有無や症状固定日が争いになるおそれもあるため、事故日から5年と考えておく方が安全です。
症状固定については、以下の記事をお読みください。
参考記事:症状固定が交通事故賠償において持つ意味
◆ 交通事故の時効の延長方法
示談交渉が難航している、治療や後遺障害認定が長引いたなどの理由で時効が迫っているときには、延長する必要があります。延長方法としては以下が挙げられます。
・訴訟を提起する
・催告をする
・相手方に権利の存在を承認してもらう
いずれにしても、権利が消滅しないように対応しなければなりません。
以上が交通事故の時効に関する基礎知識になります。
実際には交通事故で時効が問題になるケースはさほど多くないため、慌てて示談する必要はありません。しかし、何らかの理由で解決まで時間を要している場合には注意が必要です。もちろん時効が迫っていなくても早期解決するメリットは大きいので、お早めに弁護士にご相談ください。
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