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2025.11.24更新

過失相殺と損益相殺の順序

過失相殺と損益相殺がともに必要なときは、どちらを先に行うかで支払額が変わります。細かい点に思えますが、意外と重要なポイントです。

今回は、過失相殺と損益相殺の順序についてご説明します。

参考記事:過失割合とは?交通事故において持つ意味

 

 

◆ 過失相殺と損益相殺の順番によって支払額が変わる

過失相殺とは、事故について被害者にも落ち度があるときに、受け取れる賠償金を減額することです。対して損益相殺とは、交通事故を理由として金銭的利益を得たときに、相手方に請求できる損害賠償金から差し引くことです。

過失相殺と損益相殺の両方が発生するケースはよくあります。

たとえば、被害者の過失が認められる事故において、被害者の治療費が保険会社から病院に直接支払われている(一括対応)ケースです。

両方が発生するときは、どちらを先にするかで最終的な支払い金額が変わります。

たとえば、以下のケースで考えましょう。

・損害総額:1000万円

・過失割合:9:1

・損益相殺額:200万円

このとき、過失相殺を先に行えば、被害者が相手方に請求できる金額は、

1000万円×0.9-200万円=700万円

です。

同じケースで、損益相殺を先に行うと、

(1000万円-200万円)×0.9=720万円

となります。

順序が異なるだけで、支払額に大きな差が生じます。一般的に、損益相殺を先に行った方が被害者に有利です。

 

◆ 過失相殺を先に行うもの

一般的に、損害の補てんとしてなされる給付・支払いの場合には、過失相殺が先に行われます。具体例は以下の通りです。

・加害者からの弁済

・自賠責保険や加害者側任意保険からの支払い

・労災保険からの給付(最高裁平成元年4月11日判決)

 

◆ 損益相殺を先に行うもの

損益相殺が先に行われるとされるのは、社会保障としてなされる給付です。健康保険からの給付が該当します。

したがって、被害者に過失があるケースでは、被害者は健康保険を利用した方が金銭面で有利になります。

参考記事:交通事故で使える保険

 

◆ 判断がわかれているもの

裁判例によって判断がわかれているものもあります。すなわち、国民年金や厚生年金からの給付では、過失相殺を先に行う裁判例と、損益相殺を先に行う裁判例が存在します。

被害者の立場であれば、損益相殺を先に行うよう主張すべきです。

 

 

以上が、過失相殺と損益相殺の順序になります。細かい話ですので、ご存じない方が多いかと思いますが、実際の支払額を左右するポイントです。

 

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。過失相殺や損益相殺について疑問やお悩みがある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2025.11.11更新

婚姻費用調停の流れ・聞かれること

婚姻費用について話し合いがまとまらないときは、調停による解決が考えられます。今回は、婚姻費用調停について、流れや聞かれることなどをご説明します。

婚姻費用に関する基礎知識は、以下の記事をご覧ください。

参考記事:婚姻費用とは?含まれるものや養育費との違い

 

◆ 婚姻費用調停とは?

婚姻費用の金額は、まずは夫婦間の話し合いにより決めます。話し合いができない・まとまらないときに考えられる方法が、婚姻費用調停(婚姻費用の分担請求調停)です。

調停とは、裁判所における話し合いです。中立の立場にある調停委員を介して行われるため、夫婦間で直接やり取りする必要はありません。当事者だけの交渉よりも冷静に話し合いができるメリットがあります。

婚姻費用調停は、単独で申立てることも、離婚調停と同時に申立てることもできます。離婚調停と合わせて行うときは、先に婚姻費用について話し合われるのが一般的です。

参考記事:離婚調停の流れ~申立てから離婚成立まで

 

◆ 婚姻費用調停の流れ

申立書等の必要書類を提出して婚姻費用調停が申立てられると、第1回期日の日程が決められます。

期日では、当事者が交互に部屋に呼ばれ、それぞれ調停委員と話し合います。夫婦は直接対面せず、互いの主張は調停委員を介して相手に伝えられます。法廷ではなく会議室のような部屋で行われるため、過度に身構える必要はありません。要する時間は合計2時間程度です。

話し合いの中で双方が合意できる金額が決まれば、調停成立です。内容は調停調書にまとめられ、訴訟における判決と同様の効力を有します。

双方が合意できない限り、調停は成立しません。結論が出なければ、次回に持ち越しです。調停は、通常は1ヶ月~1ヶ月半に1回開催されます。

 

◆ 成立しなかったら審判に移行

調停を繰り返しても合意できないときは、調停は不成立です。自動的に審判手続きに移行します。

審判では、当事者の主張や根拠となる資料をもとに、裁判所が結論を言い渡します。訴訟における判決のようなイメージです。同意していない当事者にも強制力を有します。

実際には、裁判所が示す算定表に沿った結論になるケースが多いです。

参考記事:婚姻費用の相場

 

◆ 婚姻費用調停で聞かれること

婚姻費用調停で必ず聞かれるのは収入です。収入は婚姻費用を決める際に重要な要素になります。源泉徴収票や確定申告書といった、収入を証明する書類を用意しておきましょう。

子どもに関する事情も、婚姻費用の算定にあたり重要です。有無、人数、年齢、塾・私立学校の学費などが確認されます。

他には、生活状況、調停に至る経緯、婚姻費用の希望額などを聞かれます。事前に準備しておくとよいでしょう。

 

以上が婚姻費用調停に関する基礎知識です。調停は一応自力でも進められるものの、質問への回答や提出書類など、慣れていないと難しい面があります。弁護士への相談・依頼がオススメです。

 

当事務所では、離婚の初回相談を無料としております。婚姻費用調停について不安や疑問がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所