後遺障害による逸失利益の計算方法
交通事故で後遺障害を負った場合には、逸失利益を相手方に請求できます。逸失利益は、交通事故の賠償金の中でも大きなウエイトを占め、重要な項目です。
今回は、後遺障害による逸失利益の計算方法について解説します。
◆ 後遺障害逸失利益とは?
後遺障害逸失利益とは、事故による後遺障害がなければ得られたであろう、将来の収入です。
事故で後遺障害が残ると、思うように体が動かずに労働に支障が出てしまい、収入が減少すると考えられます。そこで、将来にわたって続く減収分を「逸失利益」という費目で相手方に請求できます。
◆ 逸失利益の計算式
逸失利益の計算式は以下の通りです。
「 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 」
3つの要素を掛け合わせれば計算できます。以下で各要素について解説します。
◆ 基礎収入
基礎収入は、原則として事故前年の年収です。
会社員については、源泉徴収票を確認して、事故前年の実際の収入を基礎収入とします。もっとも、30歳未満の若者については、現時点での賃金が低いため、全年齢平均の賃金センサスをベースとするケースがあります。
自営業者についても同様に事故前年の確定申告を基準にしますが、収入から必要経費は除かれるので注意してください。
その他、実際の収入がない人の扱いは以下の通りです。
・主婦・主夫
専業主婦(主夫)で収入がないとしても、家事労働に価値があります。したがって、女性の平均賃金を基礎収入として逸失利益の請求が可能です。兼業主婦(主夫)については、実際の収入と女性の平均賃金のうち高い方が基礎収入となります。
・子ども
まだ働いていない子どもについては、原則として全年齢の平均賃金を用います。男子については男性の、女子については男女合わせた平均賃金をもとに請求するのが一般的です。
・無職
無職であれば、基本的には逸失利益は認められません。ただし失業中であっても、今後働く可能性が高かったと認められれば、逸失利益の請求が可能です。
◆ 労働能力喪失率
労働能力喪失率は、後遺障害によって労働がしづらくなった程度を数値化したものです。基本的には、後遺障害等級によって以下の通り定められています。
後遺障害等級 |
労働能力喪失率 |
1級 |
100% |
2級 |
100% |
3級 |
100% |
4級 |
92% |
5級 |
79% |
6級 |
67% |
7級 |
56% |
8級 |
45% |
9級 |
35% |
10級 |
27% |
11級 |
20% |
12級 |
14% |
13級 |
9% |
14級 |
5% |
◆ 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
労働能力喪失期間は、原則として症状固定時から67歳までとされています。未就労であれば、基本的に18歳から67歳です。
もっとも、むちうちの場合には、12級で10年程度、14級で5年程度に制限されるケースが多いです。
賠償金は一括で支払われるため、受け取った後で運用が可能です。運用益を考えると、単に労働能力喪失期間を掛け合わせるだけだと、受け取る側に有利になり過ぎます。そこで、想定される運用益を除くために、ライプニッツ係数という数字を利用します。実際に計算する際には、以下を参考にしてください。
以上の3つの要素がわかれば、後遺障害逸失利益の金額を計算できます。もっとも、現実には「実際の収入は減っていない」「労働には影響がないはずだ」などと相手に主張され、逸失利益の有無や金額が争いになるケースは多いです。
当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。「逸失利益がいくらになるか知りたい」「相手方と争いになっている」といった方は、お気軽にお問い合わせください。