年金分割は半分もらえるわけではない!離婚時の年金分割の基礎知識

離婚を考えている方(特に高齢の女性)から「年金分割で半分もらえるの?」と聞かれることがあります。

実際には、配偶者がもらえる年金の半額を受け取れるわけではありません。

今回は、少し制度がややこしい年金分割について、基礎知識を解説します。

 

◆年金分割とは?

年金分割とは、離婚時に婚姻期間中の厚生年金の記録を分ける制度です。主に高齢の専業主婦(夫)が、離婚した後の生活に困ってしまうのを防ぐために設けられています。

しかし、元配偶者が受け取れる年金の「半額」を分けてもらえる制度ではありません。

ポイントは「厚生年金」の「婚姻期間中」の納付記録を分ける点です。

 

◆厚生年金の記録を分ける→自営業者は対象外

年金分割は「厚生年金」の納付記録を分ける制度です。

大まかにいうと、日本の年金は、

  • 全国民が加入する「国民年金」(1階部分、基礎年金)
  • 会社員や公務員が加入する「厚生年金」(2階部分)

に分かれています。

年金分割の対象は、2階部分の厚生年金の納付記録になります。自営業者は厚生年金には加入していないため、対象外です。

したがって、夫が自営業者の場合には、そもそも年金分割を受けられません。

 

◆婚姻期間中の記録を分ける→結婚前は対象外

年金分割は「婚姻期間中」の納付記録を分ける制度です。

分割の対象になるのは婚姻期間中の記録だけであり、結婚前の期間は対象となりません。財産分与において、結婚前に築いた財産が対象にならないのと同様です。

 

◆合意分割と3号分割

年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。

合意分割とは、夫婦の合意に基づいて納付記録を分けることです。夫婦が共働きで2人とも厚生年金に加入しているケースや、2008年4月より前に結婚していたケースで利用されます。按分割合は夫婦で話し合いますが、通常は0.5、すなわち均等になります。

3号分割とは、夫婦の一方が「3号被保険者」であった場合の分割方法です。3号被保険者とは、配偶者が会社員や公務員で、自身は専業主婦(夫)あるいは扶養の範囲内で働いていた人をいいます。3号分割においては、話し合いは必要ありません。ただし、3号分割できるのは2008年4月以降の記録に限られます。

 

以上が年金分割に関する基礎知識です。単純に半分に分けるのではないとご理解いただけましたでしょうか?

なお、3号分割だとしても、離婚後2年以内に手続きが必要な点は忘れないでください。詳しい手続きや、合意分割と3号分割の細かい違いについては、機会を改めて解説します。

 

当事務所では、離婚の初回相談は無料です。年金分割に限らず、離婚に関して不安な点をご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。