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2023.05.11更新

離婚できる理由は?5つの法廷離婚事由

「○○を理由に離婚できますか」と相談の場でよく聞かれます。

お互いが合意できるのであれば、いかなる理由であっても離婚が可能です。もっとも、一方が拒否するときには、法律上定められた要件(法定離婚事由)を満たさないと離婚が認められません。

法定離婚事由は民法770条各号に規定されています。1号から順にご紹介します。

 

◆ 1号:不貞行為

不貞行為とは、配偶者(妻や夫)以外の異性と自由な意思に基づいて性的関係を持つことです。いわゆる不倫や浮気をイメージしてください。

法律上の不貞行為に該当するためには、性的関係が認められなければなりません。腕を組んだりキスしたりするだけでなく、性行為があったと判断できる必要があります。

現実には、性的関係を直接証明するのは困難です。ラブホテルから出てきた現場の写真や、性的関係をうかがわせるメッセージのやりとりなどがあれば、有力な証拠となります。

十分な証拠がなくても、5号の「婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められるケースもあります。

 

◆ 2号:悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、正当な理由なく、同居・協力・扶助という夫婦間の義務に反することをいいます。勝手に家を出て行く、収入があるのに生活費を一切渡さない、といったケースです。

単身赴任のために家を空けているなど、正当な理由があれば該当しません。

 

◆ 3号:3年以上の生死不明

配偶者の生死が3年以上わからないときも離婚できます。警察に捜索願を出したり友人や知人にたずねたりしたにもかかわらず、行方がつかめないケースです。

居場所がわからなくても、手紙や電話などで生きている事実がわかっている場合には該当しません。

なお、7年以上生死不明のときには失踪宣告制度の対象になります(民法30条)。失踪宣告がなされると死亡したとみなされて婚姻関係は解消され、相続が始まります(民法31条)。

 

◆ 4号:回復の見込みがない強度の精神病

配偶者が統合失調症などの重い精神病にかかっていて回復の見込みがなければ、離婚できる可能性があります。

もっとも、精神病になっている配偶者の生活に配慮が必要であるため、4号による離婚は簡単には認められません。

 

◆ 5号:その他婚姻を継続しがたい重大な事由

1~4号のいずれに該当しなくても「婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められれば離婚が可能です。

認められる可能性がある例としては、以下が挙げられます。

  • 長期間の別居
  • DV・モラハラ
  • 性の不一致・セックスレス
  • 犯罪行為による服役
  • アルコール・薬物依存
  • 借金・ギャンブル・浪費
  • 過度な宗教活動

単に上記の事情があるだけでなく、それにより夫婦生活が破綻しているかがポイントになります。

とりわけ長期間(数年以上)の別居は、夫婦生活の破綻を裏付けるために重要な要素です。

よく「性格の不一致」が離婚理由として挙げられますが、人間同士である以上、多少性格が合わない事態は生じ得ます。裁判において性格の不一致だけで離婚が認められるのは、よほどの場合だけです。基本的には、他の要素と合わさって離婚の理由となり得るに過ぎません。

 

 

当事務所では、離婚の初回相談を無料としております。離婚理由があるかでお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2023.04.26更新

離婚後の姓

ご相談の中で「離婚後は旧姓に戻した方がよいでしょうか?」と質問されることがあります。

今回は、結婚の際に女性が夫に姓を合わせていたケースを念頭に置いて、離婚後に姓がどうなるかを解説します。

 

◆離婚後は旧姓に戻るのが原則

婚姻により姓を変えていた人が離婚すると、旧姓に戻るのが原則です(民法767条1項)。多いのは、妻が結婚の際に夫の姓に改め、離婚により元の姓に戻るケースです。

離婚すると姓が変わるだけでなく、戸籍も別になります。妻が親の戸籍に戻るか、妻自身を筆頭者とする新たな戸籍を作成するかのいずれかになります。姓が変わらない夫の戸籍はそのままです。

両親が亡くなっていて戻る戸籍がないときには、新たな戸籍を作るしかありません。また、後述する通り、子の親権者となって子の姓も変えたいときには、新たな戸籍を作成してください。

旧姓に戻るときは、離婚届の該当欄に記入すれば手続きが済みます。

旧姓に戻るメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 夫の姓を名乗らなくて済み、心機一転を図れる
  • 両親から受け入れてもらいやすい

他方で、姓を変えるデメリットもあります。

  • 離婚の事実が周囲に明らかになる
  • 各種名義変更の手続きが面倒である

 

 

◆離婚しても姓を変えたくないなら届出をする

離婚後も婚姻時の姓(夫の姓)をそのまま名乗ることも可能です。

離婚しても姓を変えないときには、離婚の日から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を役所に提出しなければなりません(民法767条2項)。期限を過ぎてしまわないように、離婚届と同時に提出するとよいでしょう。

姓を変えないとしても、離婚すれば夫婦の戸籍は別になるため、妻は新しい戸籍を作成します。

姓を変えないメリットは以下の通りです。

  • 離婚を周囲に知られにくい
  • 名義変更手続きをしなくてよい
  • 子の姓を変更せずに済む

他方で、次のデメリットもあります。

  • 夫の姓を名乗ることへの心理的抵抗がある
  • 再婚後に2度目の離婚をした際に、旧姓(生まれたときの姓)には戻れない

 

 

◆離婚後しばらくして姓を変えたくなったら裁判所の許可が必要

離婚して時間が経った後に選んだ姓を変えたくなった場合には、家庭裁判所に申立てて許可を得なければなりません。

変更が認められるには「やむを得ない事由」が必要です(戸籍法107条1項)。一般的な氏の変更に比べると許可は出やすいですが、思い通りに変更できるとは限りません。

 

 

◆離婚後の子どもの姓

離婚時に旧姓に戻した妻が親権者であるときには、子の姓も自分の旧姓にしたいと考えるケースも多いでしょう。

もっとも、子の姓は何もしなければ元のままです。勘違いされている方もいますが、自動的に親権者と同じになるわけではありません。

子の姓も変更したければ、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立て」を行います。子が15歳未満のときは親権者が、15歳以上のときは子本人が申立ててください。許可そのものは簡単に認められます。

許可が出たら、役所に入籍届を提出して、母(元妻)と同じ戸籍に入れます。同じ戸籍に3世代が入ることはできないため、母(元妻)は離婚時に両親の戸籍に戻らず、自分を筆頭者とする戸籍を作っておくようにしてください。

 

 

以上が離婚と姓の関係です。時間が経ってから変更するのは面倒であるため、離婚時によく考えて選択するようにしましょう。

当事務所では、離婚の初回相談は無料としております。姓の問題に限らず、離婚についてお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2023.04.11更新

後遺障害の認定確率

交通事故に遭われた方から、よく「後遺障害は認定されそうですか」とご相談を受けます。

以下の参考記事でも紹介した通り、後遺障害が認定されると「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」を受け取れるため、認定の有無や等級は重要になります。

参考記事:後遺障害の認定を受けるメリット

 

もっとも、後遺障害の認定確率は決して高くありません。

今回は、後遺障害の認定確率に加えて、認定されない理由や対処法を解説します。

 

 

◆後遺障害の認定確率は低い

後遺障害の認定確率は、一般的に非常に低いです。

2020年度のデータによると、自賠責保険の支払件数が89万8407件であるのに対し、何らかの後遺障害が認められたのは4万9267件に過ぎません(参考:2021年度自動車保険の概況|損害保険料率算出機構)。

支払件数には後遺障害申請をしていない事案もあるため正確な値ではないものの、認定確率は約5.5%です。例年おおむね5%程度で推移しており、後遺障害の認定確率は低いといえるでしょう。

 

 

◆後遺障害が認定されない理由

認定されるべき症状があるのに認定されなかった理由は、様々考えられます。

  • 後遺障害診断書の記載に不備があった
  • 認定に必要な検査をしていなかった
  • 治療期間、日数が不十分だった
  • 症状に一貫性がなかった

原因を特定するには専門知識が不可欠であるため、交通事故に精通した弁護士に相談してみるとよいでしょう。

そもそも「事故前の状態に戻っていないのになぜ後遺障害と認められないのか」と疑問をお持ちの方は、以下の記事をご参照ください。

参考記事:後遺障害とは?後遺症との違いは?

 

 

◆後遺障害が認定されなかったときの対処法

認定を受けられるはずの症状なのに非該当、あるいは想定より低い等級であった場合には、主に以下の対処法が考えられます。

  • 異議申立てをする
  • 紛争処理申請をする
  • 訴訟を提起する

まずは審査機関に異議申立てをして、結果が変わらないときに他の方法を検討するのが一般的です。いずれの方法をとるにせよ、結果を覆すだけの説得力のある証拠を揃えなければなりません。

 

 

後遺障害の認定確率は低く、等級を認めてもらうハードルは高いです。「認定を受けられるか知りたい」「非該当になったのはおかしい」などとお悩みであれば、弁護士にご相談ください。

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。認定の見通しはもちろん、後遺障害以外の点もアドバイスが可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2023.03.29更新

離婚の種類

離婚の種類は、手続きの段階によって大まかに以下の4つに分けられます。

 

◆協議離婚

協議離婚とは、夫婦の話し合いによる離婚です。夫婦間で合意して離婚届を出すだけでよいため、特別な費用はかからず手続き自体も難しくありません。離婚全体の9割近くが協議離婚になります(参考:令和4年度「離婚に関する統計」の概況|厚生労働省)。

協議離婚では、合意さえできれば財産分与、養育費などの条件は夫婦間の話し合いで決められます。条件を詰めずに離婚することも可能ですが、トラブルの元になるので避けてください。

決まった条件は必ず書面にして残しましょう。「公正証書」にしておくのがおすすめです。

離婚で公正証書を作成するメリットは、以下の記事で解説しています。

離婚協議の内容を公正証書にするメリット

 

◆調停離婚

調停離婚とは、裁判所における調停で決まった離婚です。調停とは、裁判所で調停委員が間に入ってする話し合いです。調停離婚の割合は全体の1割弱となっています。

法律上、いきなり裁判で離婚を争うことはできず、まずは離婚調停を申立てなければなりません。したがって、協議離婚ができないときには調停を申立てるのが通常です。

調停では、調停委員が間に入って交互に双方の言い分を聞いてくれます。顔を合わせなくてよいため、夫婦ふたりの話し合いよりも冷静になれる点がメリットです。合意すれば判決と同様の強制力を持つ調停調書が作成され、相手が約束を守らない事態にも備えられます。

デメリットは時間を要する点です。調停は1ヶ月に1回程度、平日に行われます。申立てから離婚まで、少なくとも数ヶ月、長ければ1年以上の時間がかかってしまいます。調停はあくまで話し合いであるため、双方が折り合えなければ離婚はできませせん。

 

◆審判離婚

調停離婚が成立しなくても、家庭裁判所の職権による「調停に代わる審判」で離婚が決まるケースがあり、審判離婚と呼ばれます。

細かい点に争いがあるだけであったり、当事者の出頭が難しかったりするケースなどで審判離婚となる可能性があります。ただし、件数としては少ないです。審判が出されても、2週間以内に異議申立てがあると訴訟(裁判)になります。

 

◆裁判離婚

調停離婚が成立しないときには、通常は裁判により離婚が争われます。裁判の判決で決まると裁判離婚となります。裁判離婚となるケースは、全体から見るとわずかです。

裁判離婚が認められるためには、民法770条1項に定められた離婚原因が存在する必要があります。判決が出れば、相手の合意がなくても離婚が可能です。離婚原因が存在しなければ、離婚は認められません。

なお、裁判の途中でも裁判官が間に入った話し合いにより離婚が成立するケースがあり、和解離婚と呼ばれます。また、数は非常に少ないものの、離婚を求められた側が相手の請求を全面的に認めたときは認諾離婚となります。

 

以上が離婚の種類になります。

夫婦間で話がつけば協議離婚ができますが、難しいときには調停など、裁判所を利用した手続きが必要です。裁判所での手続きには時間や手間がかかり、専門知識も必要であるため、自力で行うのが大変であれば弁護士にご相談ください。

当事務所では、離婚の初回相談は無料としております。もちろん、依頼は前提ではなく、ご相談だけでも構いません。離婚に関してお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2023.03.10更新

後遺障害認定までの流れ|事前認定と被害者請求の違い

交通事故でケガを負った方にとって、大きなポイントになるのが後遺障害の認定手続きです。

後遺障害が認定されるまでの流れは、おおむね以下の通りになります。

 

①症状固定

ケガの治療を続けていると、やがて「症状固定」という状態を迎えます。症状固定とは、治療を続けても症状の改善が望めない状態です。後遺障害認定は、症状固定時に残った症状を対象としてなされます。

注意して欲しいのが、相手方保険会社が一方的に「症状固定による治療費打ち切り」を宣告してきたケースです。症状固定でないのに治療をやめると、後遺障害認定が遠のく可能性があります。疑問があれば、まずは本当に症状固定といえるかを主治医に確認すべきです。

 

②後遺障害診断書作成

後遺障害申請をする際には「後遺障害診断書」の提出が必要です。後遺障害診断書は医師が作成する書類で、症状や検査結果などが記載されます。書式を保険会社から入手し、医師に作成をお願いしてください。

後遺障害診断書の内容は認定を左右しますので、間違いなく記載してもらうのが重要です。

 

③申請手続き

申請手続きには「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があります。

 

事前認定

事前認定とは、相手方の保険会社に手続きを任せる方法です。

後遺障害診断書を提出するだけでよく、他の手続きは保険会社に任せられるため、簡単な方法といえます。

もっとも、相手方の保険会社は一般的に等級獲得に積極的ではありません。被害者に有利な資料が提出されず、結果として、本来認められるべき等級が認定されない可能性もあります。

 

被害者請求

被害者請求とは、すべての手続きを被害者自身で行う方法です。

必要書類の収集と申請を自分で行うため、手間がかかります。

メリットは、提出書類を自分で決められる点です。プラスになる資料を提出できれば、等級認定の可能性を上げられます。

 

④結果の通知

申請がなされると、自賠責保険の調査機関により審査され、結果が通知されます。症状にもよりますが、数ヶ月で届くのが通常です。

結果を受け入れる場合には、そのまま示談金の交渉に進みます。納得がいかないときは「異議申立て」などの不服申立て手続きも可能です。最終的に訴訟まで争われるケースもあります。

 

以上が後遺障害認定までの流れです。

後遺障害認定についてお悩みの方は、弁護士にご相談ください。

弁護士は

□ 不当な治療費打ち切りへの対応

□ 後遺障害診断書の内容チェック

□ 被害者請求の代行

などでお役に立てます。

後遺障害認定には専門的な知識が必要であり、ご自身で対応するのは難しい側面があります。賠償総額に大きく関わるため、弁護士が関与するメリットは大きいです。

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。後遺障害の認定手続きはもちろん、相手方とのやりとりなどに悩みをお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2023.02.20更新

後遺障害の認定を受けるメリット

交通事故によるケガが治らなかったときには、後遺障害が認定される可能性があります。
後遺障害の認定を受ける最大のメリットは、賠償金が増額することです。
後遺障害認定により、賠償金の費目として「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」が追加されます。
後遺障害慰謝料や逸失利益は金額が大きくなりやすく、全体の賠償金を大幅に底上げするのです。
以下で、後遺障害慰謝料と逸失利益の性質と金額について簡単に解説します。

メリット①後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故で後遺障害を負ったことにより生じる精神的な苦痛に対して、支払われる賠償金です。
後遺障害慰謝料の金額は、認定された等級により変わります。弁護士基準(「赤い本」)と自賠責基準による後遺障害慰謝料の金額は以下の通りです。

マーク

 

弁護士に依頼して弁護士基準で請求すれば、高額な後遺障害慰謝料の受け取りが可能になります。

メリット②逸失利益
逸失利益とは、後遺障害がなければ得られるはずだった将来の収入です。
後遺障害が残ると労働に支障が生じ、将来の収入が減ってしまうと考えられます。減少する将来の収入が、逸失利益として賠償の対象になります。

逸失利益は以下の計算式で求められます。
「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

「基礎収入」は、基本的に事故前の収入です。主婦は平均賃金に基づく請求が可能であるなど、職業や立場によって別途修正されます。

「労働能力喪失率」は等級によって以下の通り定められています。

図2

 

「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」は症状固定時の年齢によって変わります。数値は以下を参考にしてください。
参考;就労可能年数とライプニッツ係数表|国土交通省
ただし、むちうちで後遺障害が認定されたときは、労働能力喪失期間が12級で10年程度、14級で5年程度に制限されるケースが多いです。

以上の3つの数字を掛け合わせれば、逸失利益を計算できます。

 

後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取れることは、後遺障害の認定を受ける大きなメリットです。
認定を受けること自体に特にデメリットはありません。
もっとも、後遺障害認定をご自身で行うと手続きが面倒です。保険会社に任せる方法もありますが、適切な等級が認定されない可能性があります。
手間を省きつつ認定の可能性を上げるには、弁護士への依頼がおすすめです。

当事務所は交通事故に精通しており、後遺障害認定に関する知見も豊富にございます。

初回相談は無料としておりますので、後遺障害をはじめとして、交通事故に関してお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2023.02.02更新

解決金とは?慰謝料との違いやメリット・デメリット

協議や調停で離婚の合意をした際に「解決金」という名目で金銭の支払いが定められるケースがあります。
解決金とは、トラブルを解決する際に支払われる金銭です。

解決金に法的根拠はなく、離婚の際に必ず支払う金銭でもありません。
支払いの理由を示さないという特徴があり、離婚条件の調整に利用されます。

①解決金と慰謝料の違い
たびたび「解決金と慰謝料は何が違うの?」と聞かれます。
不倫やDVなどがあって離婚に至る場合には「解決金」「慰謝料」のいずれの言葉も用いられるため、違いがわからないのはもっともです。
両者の大きな違いは、法的根拠の有無にあります。

前述の通り、解決金には法的根拠が存在しません。理由が不明確でも、解決金の支払いを取り決めることが可能です。
対して慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償金であり、不法行為(民法709条以下)という法的根拠があります。
実際には、中身としては慰謝料であっても、解決金という名目で支払われるケースが頻繁にあります。

②解決金のメリット
内容は慰謝料であるのに、解決金という名目が用いられるのは、スムーズに離婚の合意ができるメリットがあるためです。
慰謝料という言葉を使うと、支払う側に非があることが明確になるため、うまく話し合いがいかないケースがしばしばあります。
解決金であれば、支払う側は自分の非を認めていない形をとれる一方で、受け取る側は早く金銭をもらえるため、双方にメリットがあります。
別の例としては、法律上認められる離婚原因がないケースで、相手が経済的不安を理由に離婚したがらないときにも有効です。
このケースでは、離婚したい側が解決金を支払うことで、離婚の合意ができる可能性があります。

③解決金のデメリット
解決金のデメリットは、内容が不明確であるがゆえに、後から紛争が蒸し返されるリスクがある点です。
支払った側は「他に支払う必要はない」と考えていても、受け取った側が同じ考えとは限りません。
後になって、慰謝料、財産分与などの名目で金銭請求がなされる可能性も考えられます。

争いの泥沼化を避けるために、解決金を支払って解決する際の合意書の中に条項として、
「本合意書に記載するものの外には、当事者間には債権債務が無いことを相互に確認する」という清算条項を入れておくことが必須です。
この清算条項を入れておけば、支払う金銭の名目が慰謝料であれ解決金であれ、合意成立後に別途何かしらの金銭の請求がされることはありません。

解決金を巡るトラブルを防ぐには、弁護士への相談をご検討ください。
合意に専門家が関われば、トラブルの多くは避けられるはずです。
金額が不当でないかもチェックでき、安心して合意を結べます。
当事務所では、離婚の初回相談は無料です。

解決金だけでなく、財産分与、養育費など、離婚に関するお悩みをまとめてご相談いただけます。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2023.01.20更新

後遺障害とは?後遺症との違いは?

交通事故でケガを負った方から、たびたび「後遺症が残っているのに等級が認定されなかった」とご相談を受けることがあります。

事故による症状が残っているにもかかわらず後遺障害の等級が認定されないのでは、納得がいかないのもごもっともです。

交通事故で「症状があるのに等級認定されない」という問題が生じるのは、「後遺症」と「後遺障害」で言葉の意味が異なるためです。
一般的に同じ意味で用いられているケースも多いため、誤解が生じやすくなっています。

簡単にいえば、「後遺症」の一部しか「後遺障害」とは認められません。

詳しく説明すると、それぞれの言葉の意味は以下の通りです。

・後遺症とは
後遺症とは、ケガの治療をしても完全には元の状態には戻らずに、身体や精神に何らかの症状が残ってしまうことです。
寝たきり、手足の切断など、他人から見てわかる変化は、もちろん後遺症に該当します。それだけでなく、痛み・しびれ、記憶障害など、一見してわからない症状であっても後遺症にあたります。
比較的なじみのある言葉であり、一般の方だけでなく、医師であっても「後遺症が残る」という言い方をするでしょう。しかし、「後遺症」は、交通事故における「後遺障害」とイコールではありません。

・後遺障害とは
交通事故における「後遺障害」は、「後遺症」の一部だけを指す言葉です。
具体的には「それ以上治療しても改善が見込めない状態」(「症状固定」といいます)になった時点の症状について、次の条件を満たすと「後遺障害」となります。

 交通事故と因果関係がある
 労働能力が低下・喪失している
 自賠責保険で定められた症状に該当する

認定機関がこれらを満たすと判断したときだけ、後遺障害の等級認定がおります。
等級は1級から14級に分かれており、どれにも当てはまらないと等級非該当となってしまいます。

たとえば、むちうちにより痛み・しびれの自覚症状が残っていても、後遺障害の要件を満たさずに等級非該当とされるケースは多いです。

症状にもよりますが「後遺障害」の認定ハードルは思いのほか高いとお考えください。

「後遺症」があっても「後遺障害」が認定されないケースは珍しくありません。
そもそも、医師でさえ両者の違いを十分に認識していない場合があります。
後遺障害について疑問がある方は、弁護士へご相談ください。
申請書類の内容によって認定の判断が分かれる可能性もあり、どの弁護士に相談・依頼するかは重要です。

当事務所の弁護士は交通事故に精通しており、後遺障害の認定基準や申請のポイントを熟知しています。
ご相談の際には、認定の見通しや認定結果の妥当性についてアドバイスが可能です。
また、当事務所では、外部の画像鑑定専門医に依頼しての画像鑑定、後遺障害等級認定に関する専門医の意見書取得も可能です。

当事務所では、交通事故の初回相談を無料としております。
後遺障害だけでなく、保険会社とのやりとり、賠償金の妥当性などに悩みをお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

投稿者: 松村法律事務所

2023.01.10更新

離婚慰謝料の相場と金額を決める要素について

離婚の原因が不倫、DV(暴力やモラハラ)などであれば、慰謝料が発生します。

慰謝料とは、離婚により生じる精神的な苦痛に対する賠償金です。
厳密にいうと、離婚の慰謝料には次の2つの性質があります。

●離婚して妻・夫の地位を失うことに対する慰謝料
●離婚の原因となった行為(不倫、DVなど)に対する慰謝料

実際に請求する際には、まとめて「離婚慰謝料」として扱われ、2つの違いはさほど意識されていません。

離婚のご相談では、よく「慰謝料はいくらになりますか?」と聞かれます。
離婚慰謝料の相場は、おおよそ100万円から300万円程度です。
もっとも、100万円に届かないケースもありますし、まれに交渉の結果、500万円を超える慰謝料額になるケースもあります。
金額を決める要素、要因は様々ありますが、主なものは以下の通りです。

① 離婚の原因となった行為の内容
離婚原因となった行為(不倫、DVなど)の中身によって慰謝料が変動します。より深刻な行為に及んでいれば金額は大きくなります。
たとえば不倫であれば、夫婦の婚姻期間の長さ、夫婦の間に子供がいるか、不倫相手との間に子どもをもうけたか、などがポイントです。

② 婚姻期間
婚姻期間が長ければ長いほど、慰謝料額は増加しやすくなります。連れ添っている期間が長ければ、離婚の際の精神的なダメージがより大きくなると考えられるためです。

③ 子どもの有無
夫婦間の子の有無も要素のひとつです。とりわけ「幼い子がいるのに不倫をした」といったケースの方が金額は増えやすくなります。また、不貞相手との間に配偶者が子をもうけた場合も、慰謝料増額の要素になります。

※支払い能力
 支払う側の年収や資産状況は、訴訟での慰謝料額の認定の場面で、慰謝料額そのものに大きく影響するものではありません。しかし、離婚調停や離婚協議の話し合いの中では、相手に支払い能力が無い場合は、請求金額を下げざるを得なかったり、分割払いに応じざるを得ないなどの譲歩が必要になるケースがあります。
 分割払いで合意し途中で支払いが滞るリスクを考え、一定程度減額した上で、分割でなかく一時金として慰謝料支払いを受けるなど、被害者側が譲歩をしなければならない場合がありうるということは、頭に入れておかなければいけません。
 もちろん、配偶者に資力が無くても、不貞相手には資力があるというケースもありえます。その場合は、配偶者に離婚慰謝料を請求するという方針ではなく、不貞相手に「不貞慰謝料」を請求するという方法で慰謝料の回収を図ることを考えることになります。

以上が離婚慰謝料の主な算定要素になります。

離婚慰謝料に大まかな相場はあるものの、実際に受け取れる金額はケースバイケースです。詳しいお話を伺ってみないと、具体的な金額の見通しをお示しするのは難しい面があります。
また、離婚慰謝料は他の離婚の諸問題と絡む問題です。つまり、離婚の場合は慰謝料だけでなく、夫婦財産の清算としての財産分与の問題も解決が必要となるため、離婚慰謝料と財産分与の総額でどれくらいの金額を回収することを目指すのかという視点も必要になってくるのです。

当事務所では、離婚の初回相談は無料としております。慰謝料相場はもちろん、財産分与や親権、養育費など離婚に関する様々なお悩みにお答えいたします.

まずはお気軽にお問い合わせください。

 

投稿者: 松村法律事務所

2022.12.19更新

離婚協議の内容を公正証書にするメリット

離婚の際に取り決めた事項であっても、相手が守ってくれないケースがしばしばあります。
そこで、合意事項を公正証書にしておくのがオススメです。

公正証書とは、公証役場において公証人が作成した文書です。依頼した人が説明した内容を、公証人が正式な文書にしてくれます。
離婚において公正証書を作成するメリットは以下の通りです。

メリット① 
守られないときにすぐに差押えができる

公正証書に「強制執行認諾文言」を入れれば、相手が金銭支払いの約束を守らないケースで、別に訴訟を起こさずに財産の差押えに進めます。
たとえば、定められた養育費の支払いが滞っている場合に、公正証書の有無が大きな影響を与えます。
単なる離婚協議書だけであれば、相手が支払いを拒んでも直ちに差押えはできません。裁判所に訴訟を起こして権利を確定させて、ようやく差押えが可能になります。
「訴訟→強制執行」という二度手間になってしまうのです。
それに対して、「強制執行に服する」ことが記載された公正証書があると、わざわざ別に訴訟を起こす必要はありません。
いきなり強制執行の手続きをして相手の財産を差し押さえられます。
したがって、公正証書の作成により、お金を回収するのに要する時間や手間を大きく節約できます。

メリット② 
合意内容を明確に証明できる

公正証書があれば、合意内容の証明が容易です。
公証人を務めるのは元裁判官や元検察官など法律のプロであり、合意内容を法律上問題がない形で確実に記載してくれます。
したがって、公正証書の中身に疑いが生じる余地はほとんどなく、証拠としての価値は非常に高いです。
公正証書ですぐに強制執行ができるのは金銭支払い義務に限られ、他の点については訴訟などが必要になります。
しかし、公正証書を示せば、直ちに強制執行ができない点についても、簡単に証明が可能です。

メリット③ 
紛失・破損・偽造のおそれがない

作成された公正証書は当事者本人に交付されるだけでなく、公証役場で原本が20年間保管されます。
受け取った公正証書を紛失・破損しても再発行が可能です。また、相手に偽造される心配もありません。

メリット④守るように心理的プレッシャーがかかる
公正証書が作成されていると、その強力な効果ゆえ「守らなければならない」と当事者の意識が高まるでしょう。
そのため、養育費不払いなどのトラブルを未然に防げます。

以上が離婚で公正証書を作成するメリットです。

離婚により相手に請求できる権利を手にする側にとっては、公正証書は大きな武器になります。
反対に義務を負う側にとっても「書いてある以上のことは受け入れない」という主張が可能になります。
作成に時間と手数料はかかりますが、後々のトラブルを防止するためには有効な手段です。
京都府内の公証役場は、京都市、宇治市、舞鶴市、福知山市に所在しています。
利用を検討してみるとよいでしょう。

ただし、公証人は離婚内容の相談に乗ってくれないため、公正証書にする前に夫婦で話し合わなければなりません。
弁護士は公正証書作成のお手伝いも可能です。

話し合いができない方や、内容をどうすればいいかわからない方は、ぜひ当事務所までご相談ください。

投稿者: 松村法律事務所